
安齋 その大上さんのレコードジャケットは、確か活版(印刷)で一度出したやつをもとに、4色で印刷したんですよね?
奥村 そうでしたっけ。2色だったと思うけど。
安齋 あっ、そうですか。僕はとにかく色の指定をすごく覚えていて。たぶん奥村さんが指定されたんだと思うんですけど、シアン82‚35%みたいに100分の1の位まで書いてあったんです。
奥村 たぶん僕が指定したんだと思うけど、記憶にないなぁ(笑)。
安齋 今はデジタルだから、細かい色を出せるじゃないですか、さすがに82‚35%は大げさにしても。でも、当時、色の指定は全部10(の単位)が普通。そのまま印刷屋さんに持っていったら、逆にその色の見本を持ってきてくれと開き直られて、僕、困っちゃって(笑)。
奥村 ははは。そうだよね、わからないよね。
安齋 だからって奥村さんに聞き返すようではお使いとしてあまりに子供。だから、とりあえずカラーチャートを調べて、だいたいこのくらいのニュアンスじゃないかとあたりをつけた(笑)。で、色校が出たら、そのまま通っちゃって、「え、あの色で良かったんだ!?」みたいな(笑)。
奥村 ははは。あの頃も今もそうなんですけど、僕、カラーチャートを見ないんですよ。掛け合わせ4色くらいを頭の中で組み立てて、ここの色はこのパーセントで、そっちの色はこのパーセントで、3色くらいで「抜き」でって、凝っちゃったりしてね(笑)。
安齋 わかります。数学の計算を解いていくみたいで楽しいんですよね。みうらじゅんもその当時からパーセントがだいたい頭に入っているんで、一緒にいると「この壁の色は……」って始まる(笑)。
奥村 そうそう。「この色」って見せられれば、だいたいCMYKのパーセンテージがぱっと浮かぶ。
安齋 逆にいうと、それができないと当時は(デザインを)できなかったわけですものね。

奥村 ところで、安齋さんは麹谷(宏)さんのところにもいらしたんだよね? 麹谷さんのルーツは田中一光先生だから、安齋さんのルーツもデザイン界のど真ん中、源流になるんですよね。そうは見えないけど(笑)。
安齋 ……ずいぶん小さな支流になっちゃいました(笑)。ただ、僕の場合、もともとは桑沢(デザイン研究所)で。当時、奥村さんたちの「WORKSHOP MU!!」に憧れて似たようなことをやってたんです。
奥村 ああ、そうなんですか。安齋さんの作品集『安齋肇作品集 Harold – T 100 Peace』を拝見しましたけど、すごく良かった。楽しめました。
安齋 ありがとうございます。古い作品も多いし、自信もないのでMacで合成しちゃったんですけど。奥村さんは作品集、出されないんですか?
奥村 人のはやるんだけどね。自分のはついつい後回しにしちゃって(笑)。
安齋 面倒臭いんですよね。僕の場合は版下とかまで取ってあるんで。
奥村 僕もこの前、版下を整理したら、30年位前にやった『ニューロマンサー』(ウィリアム・ギブソン著)の装丁の原画が出てきて。あれ、何かで出力したやつを切り刻んでそれをまた手貼りでコラージュしてるんですよ。それが全部剥がれてボロボロで。
安齋 わー、もったいない!
奥村 あんまりボロボロだから、捨てようとしたら、アシスタントが慌てて。一生懸命かき集めて直してました。
安齋 それはそうですよ(笑)。考えてみると、今は楽ですよね。みんなで窓(モニター)を見てやるっていう。昔はいろいろ目の前に広げなきゃ何もできなかったけど。
奥村 ですね。僕はコンピューター風なことはやっていたけど、切り貼りでしたからね。その後にMac2は買ったけど出力機がなかったから、モニターを写真で撮って、それをまた合成したりして。
安齋 それをまた合成したりするってところがカッコイイ(笑)。
奥村 大変ですけどね。でも、昔は結構大変なことを、普通にやってましたね。
安齋 でも、なんか、やっぱそっちがいいんじゃないかって思うんですよね。ぜひ作品集、作ってくださいよ。
奥村 そうだね・・・そろそろね。誰かがやってくれるといいんだけど(笑)。
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