
中川 2001年にTHE BOOMの宮沢和史さんと旅をして『旅の響き』という写真集を出したのですが、その頃も「見たものはすべて残してやる」くらいの勢いでバシバシ撮ってました。
奥村 これ、鈴木さんがデザイン*しているんだね。鈴木成一氏。装丁家。ベストセラー本をはじめジャンルを問わず、これまで手がけた本は4,000冊を超えるとされる。
中川 そうです。自分の気持ちをあらかじめ鈴木さんに伝えてあったのですが、旅全体の手触りが伝わるようなまとめ方で、完璧すぎる仕上がりでした。で、この旅から戻って個展を開いて。ポートレイトじゃなくて日常を撮ることも仕事になるんだって初心に立ち返ったのがこの頃です。
奥村 なるほどね。ところで、今も昔も作品を通してみるとブルーの印象が強いよね。
中川 そうですね。ただ、好きなブルーの系統が少しずつ変わってきていて。以前は、ブルーの中でももう少し黄味よりが好きだったんですけど。
奥村 最近の写真はそこまでカラフルなブルーではないよね。
中川 最近はもっともっと透明に近づきたいなぁというのがあって。写真を撮るとき、実際にそういう色に見えているというと何なんですけど、でも、そういう色だと思って撮っているんです。プリントで色を考えるのではなくて、撮ったときの気持ちに近づけようと思ってプリントしている感じ。
奥村 個人的に好きな色もブルー系なの?
中川 そうですね。エメラルドグリーンが好きで、小学校時代はカンペンも消しゴムもエメラルドグリーンでした。その好みが続いていたのが初期の写真かも。小さい時に親が撮ってくれた写真を自分でプリントしたことがあったのですが、その時もC(シアン)がかった方がしっくりきました。私の思い出のカラーフィルターがあるとしたら、CとY(イエロー)を足した色でしょうね。

奥村 これまでの作品をまとめて写真集を出したり、個展を開いたりしないの?
中川 昨年の3月に『うわずみ』という個展を開きました。私の人生をビーカーに入れたら汚いものが沈んで上の方に美しいものが残るなって。普段は忘れているその部分を確認したい意味もあって『うわずみ』。今年は、よりそういう風に自分の写真にウェイトを置けたらと思ってます。
個展も開く予定です。
奥村 ところで、中川さんには女性のファンが多いらしいね。
中川 私の場合、意気込みすぎたり、悩みごとがあったりすると撮れないんですね。でも、どこかのCMであったように、「開いている自分」になると、光が差し込んでいるのを見るだけでも泣けてきて落ち葉一枚でもいい写真が撮れる。だから、私にとって写真は自分の状態の確認。女性が共感してくれるのは、もしかしたらそういう気持ちの部分なのかな。
奥村 わかります。「開いている自分」といえば、僕も、ごく普通の道を歩いていただけなのに、突然すべてが完璧の中にいると思えた瞬間が人生で2、3度あるんですよ。
中川 私は喜怒哀楽が激しいので、人生で2回どころか1日に2回ってこともあります(笑)。
奥村 へぇ(笑)。女性ならではの感じ方とか、個人差もあるのかな。僕は2、3回だけど、でもその感覚はわかります。上からスコーンと光が降りてくるような、周りに人がいるんだけど、自分だけになるような。
中川 特にきっかけがあるわけじゃなくて、普通ならどうでもいい場所で、「降りてくる」感じ。ただ仕事の時にいつも「降りてくる」とは限らないので、いかに人工的にその状態に近づけるかが大事ですよね。私の場合、そのために必要なのはきちんと暮らすこと。大それたことをするわけじゃなくて、庭の雑草をきちんと抜くとか、料理を少しでもするとか足元の暮らしをきちんとするよう、こころがけています。
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