
奥村 イメージは、どういうところから発想することが多いんですか?
須藤 わりと日常的なところが多いかしら。たとえば、ちょっとした錆を見たときとか。布を作る者としては、それを布で作ってみたいと思いますね。色に関しては…やっぱり私が決めていることになるのかしら?どうなんでしょう、色の発想って。奥村先生の場合は?
奥村 私の場合は、投げられたテーマに対して色を作りこんでいくやり方が多いですね。だから、自分の色を常に持っているわけじゃないんです。仕事では、っていうことですけど。
須藤 ディスカッションの中から、可能性のある色を決めていくような感じですか?
奥村 そうですね。というのも、僕は70年代から今まで、音楽の仕事が多かったので。今でいうとコラボレーションということになるんでしょうけど、曲も何も決まってない状態から話し合いで物が生まれるんです。だから、自分の色を出すというより、人の色を勝手に決めるということをやってた感じですね。
須藤 なるほど、面白いですね。我々みたいな仕事の場合は、次のシーズンの色っていうのがあるんですけど、私は極力気にしないようにしているんです。
奥村 あえて意識しないようにしているんだ?へぇ。
須藤 ファッションデザイナーは、新しい時代を作るために感性を研ぎ澄ましていますよね。そういう方には、昨シーズン見たときと、今シーズン見たときで、同じ布でも違って見えているみたい。だから、素材を作る側としては、先を見据えるより、作り続ければいいんじゃないかと思って。だから、80年代の頭に作り始めたものも、できる限り作り続けたい。もちろん、同時に新しいこともやっていくんですけど。
奥村 ちなみに、須藤さんご自身が好きな色は?
須藤 私ですか?うーん…。そうですね、私自身は、自然の中の色に一番心を動かされる気がしますね。

奥村 80年代に作った布を作り続けたいとおっしゃってましたが、最初に作った布はどういうの?
須藤 84年の芭蕉布です。もともとは、台風で使えなくなってしまった芭蕉の木を再利用したいと思ったところから始まりました。今では、糸を作ってくれているところから、「あんたのところのためだけにやってる」って言われますけど(笑)。
奥村 ははは。でも、作り続けるのは大切なことですよね。そうしないと、本当になくなっちゃう。
須藤 今は、奄美大島の芭蕉を使っているんですが、奄美ではシルクがあるからか、芭蕉はほったらかし。その野生の芭蕉を、年に2回くらい刈りに行ってくれて、繊維を取ってもらって…。
奥村 しかし、布を見ただけじゃ、まさかそんな背景があるとはわからないね(笑)。
須藤 そう、そこが問題。他に、大島紬の残糸で柄を作った布もあって。これは、残糸をパレットにより分けて、より分けたものを全部繊維状にしてもう一度糸にして作っているんです。もとが絣(かすり)の糸だから、仕上がりは本当に味わい深いし、デザインは同じでも一枚一枚違ってくる。
奥村 そういうの、楽しいですね。ただ、これも知らないと、「国産のシルク100%」で終わってしまう…。
須藤 本当は何も言わなくても伝えられるような布を作りたいんですよね。でも、まだ言わないと伝わらない、そこがジレンマです。一方で、そういう話は隠したいっていう気持ちや、エコロジーみたいな見え方はしたくないという気持ちもあったりして。
奥村 わかります。この作品はこの作品として成立しているから、あえて何も言わなくてもオリジナルですしね。
須藤 そうですね。だから、みなさんには、単純に、素敵だなっていうところから入ってきてもらえればいいのかなって。それぞれ美意識の中にちょっと入り込んで、そこから始まればいいというか。そう考えると、素敵だなって思ってもらうための要素として、色の持つ役割は大きいでしょうね、やっぱり。
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